染色体異常の出生前診断

胎児の染色体異常で最も多いのはダウン症(トリソミー21)で発生率は1/800、この値は年齢と共に増加して35歳を超えると1/400となります。私が学生の時は”35歳以上の高齢出産では羊水穿刺による染色体検査を考慮する”と習ったのを覚えていますが、最近は欧米では年齢に関わらず積極的に染色体異常のスクリーニング検査が行われています(2007年アメリカ産婦人科学会ガイドライン)。

スクリーニングは血液検査とエコーからなります。1980年後半から染色体異常(トリソミー21、18、13)のある胎児を妊娠している母親の血液検査での血清マーカー(AFP、hCG、estriol、inhibinA)の異常が研究され、1990年半ばからはエコーによる胎児の頚部浮腫(nuchal translucency:NT)の値と染色体異常の関係が注目され、NT肥厚はダウン症に80%の感受性がある事が示されました。現在ではその後の大規模データをふまえて、これらの検査を組み合わせてのスクリーニング検査が一般的です。

代表的な研究の1つは2005年にNew England Journal of Medicineに発表されたFASTER trialです。この試験では3万人以上の妊婦さんを対象に、それまで一般的だった妊娠中期の4種類の血清マーカーの検査に、妊娠初期(11週から13週)のNTと2つの血清マーカーを加える事によって、スクリーニングの正確さを改善できる事が示されました。この組み合わせでのダウン症の予見率は偽陽性率5%で94-96%となっています。

スクリーニングは合併症のあり得る羊水穿刺を行う人を減らす事が可能と期待されていますが、これらの検査はあくまでもスクリーニング検査であり確定診断ではないので、偽陽性や偽陰性がある事を理解する事が必要です。羊水検査に比べて検査できる異常が限られている事も含めて、スクリーニング前には医師と妊婦さんがその意味をしっかり話し合う必要があります。出生前診断に関しては倫理的な側面もあり、アメリカでももちろん検査しない事を選ぶ事ができます。

NTに関してはその値は染色体異常だけでなく、他の先天性異常や胎児の予後にも関連しています。NTの測定の仕方が統一されていないと正確でなくなるため、アメリカではNTの測定は認定されている施設でしか行われていません。私もNTの測定はかかりつけの開業医のドクターのところではなく大学病院に行ってきました。ガイドラインでもNTを測定できる施設がない場合には、血清マーカーの組み合わせを用いる事が推奨されています。

日本では染色体異常の出生前診断は積極的には行われていないようですが、産婦人科のガイドラインにはエコーで見つかったNT肥厚に対応するための項目があり、googleで検索してみるとNTに関する話題もみかけます。日本でも今後一般的になっていくのでしょうか。

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2 Responses to 染色体異常の出生前診断

  1. しゅる says:

    はじめまして。 先日羊水検査前にいろいろ検索していてブログ拝見しました。 参考になりました!ありがとうございます。

    事後報告ですが、私のブログにリンクさせていただいたので何かありましたらご連絡下さい。すぐにリンク解除します。

    安産お祈りしてます♪

  2. Dr.Yumi says:

    >しゅるさん

    お返事遅くなりました。もちろんリンクは大歓迎です。ブログも見せていただきました。順調に育っているようで、おめでとうございます。
    しゅるさんも安産に向けてがんばってくださいー。

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