日々のカルテ書き

ここ数週間はまたCCU(循環器集中治療室)の担当です。その上、ここのところ緊急症例なども多く忙しく、毎日夜中に帰宅しています。アメリカではオンとオフがはっきりしていて定時で帰る事ができる、とよく言われますが、私のような病院勤務のinterventional cardiologist(心臓カテーテル専門医)はそうでもなく、重症の患者さんや緊急カテが入ると、検査や治療が無事終わり、患者さんが落ち着くまで病院にいる事は日常茶飯事です。さらに、私だけでなく、多くの医師の帰宅を数時間遅くしている仕事があるのですが、それはカルテ書きです。

患者診療の記録であり、他のスタッフとの意思疎通に用いられるカルテですが、医師が患者を診察した時のプロフェッショナルフィーを請求する際にも重要になります。アメリカの保険制度では、診療費には、病院などの施設に対する費用と医師に払われる費用(プロフェッショナルフィー)があります。このプロフェッショナルフィーは手技や手術、検査の読影に加えて、患者の診察に対しても払われます。医師が病院でも外来でも患者を診察した場合には、カルテを書いて、診療報酬を請求する事ができるのです。

さて、この患者の診察に対する報酬はその複雑さによって違い、例えば単純な訴えの場合はレベル1、複雑な病態で時間もかかるような場合はレベル5となり、カルテはそれを反映するように書かなくてはなりません。国の保険であるメデイケアが、それぞれのレベルに見合ったカルテの 病歴、システムレビュー、身体所見、治療予定などの基準を出しており、不十分なカルテ記載で高いレベルの診療報酬を請求する事は不正請求となり得ます。去年私の病院ではカルテの詳細さと診療報酬請求の正確さのチェックが入りましたが、私は「このカルテには身体所見が1つ足りない」とか「家族歴が書いていない」とか、実際の診療には全く関係ないところをチェックされたので、それ以降かなり気をつけています。

教育病院ではアテンデイングが研修医と一緒に患者を診た場合は、レジデントやフェローのカルテを用いる事ができます。レジデントやフェローのカルテにサインする事で、そのカルテの内容の責任は自分となり、そのカルテを用いて診療報酬請求をする事ができます。この場合、レジデントによっては必要事項がすべて書いてある場合もあれば、抜けている事もあるので、しっかりとチェックする事が必要です。

患者を診て、検査治療をして、家族に説明をして、といくら時間を使っても、カルテをしっかりと書かないと時間に見合った診療報酬請求をできない事になり、忙しい日こそ、それに比して多くなったカルテ書きに時間を費やす事になるのです。外来中心の開業医でも同様で、患者との会話を大事にする私の先輩ドクターは、外来中にカルテを書くと患者と話ができないからカルテ書きは患者の診察が終わった夕方から始めるので、毎日9時まで帰れない、と嘆いていました。

しっかり医療記録を残すのは大切ですが、カルテ書きに時間が取られて患者の診察や対話に時間を取れないのでは本末転倒です。電子カルテになってからコピーがほとんどで実のないカルテも多くなりました。効率のよいカルテで正当な診療報酬が与えられる制度が必要です。

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