日帰り心カテ治療

先日、アメリカの心臓カテーテル学会(SCAI)から心臓カテーテル治療(PCI)後の病院滞在日数に関してのエキスパートオピニオンが出版されました。去年から私の病院でも、リスクの低い患者さんには日帰りでのPCIを始めてもよいのではないか、と話をしていたのですが、これは多くの人が興味を持っているトピックのようです。

最近はPCIも薬剤(特に抗血小板療法)やステントの登場でずいぶんと安全になってきており、現在はPCIの後は24時間の入院となっていますが、私が毎日NP(ナースプラクテイショナー)とラウンドしているPCI後の病棟では、翌日何も問題なく退院していく人がほとんどです。私のボスによると、15年前はバルーン治療を行い、血管の解離を起こせば数時間はカテ室で経過観察していた時代(現在はステントを入れて終了です)、シースは翌日に抜去し、しばらくはへパリンを用いてワーファリンを始め、問題なく成功したカテーテル治療での入院が最低3日間だったそうです。

さて、PCI後の心配な点としてはステントが急性閉塞する場合と動脈穿刺部位の合併症があげられます。これまでに出版された日帰りPCIの安全性を評価したデータには、合わせて5000人近くの患者さんが参加していますが、どの論文も日帰りPCIを行うための詳細な条件が決められています。そのうちランドム化されているものは最近の400人規模の3つの試験です。対象は基本的には安定している外来患者で、PCIが問題なく行われ、重症な基礎疾患がない事、そして動脈穿刺部位の合併症がない事、が条件となります。

これらのデータは、動脈穿刺部位の出血が少ない手首の血管(Radial artery)を用いた患者さんの方が多いのですが、足の血管(Femoral artery)と止血デバイスを用いた論文や、最近ではFemoral arteryのシースをPCI後すぐに用手抜去して4時間後に帰宅、などという積極的なものもあります。

私達の病院でも去年、これらの論文を参考に日帰りPCIを始めようとしたのですが、日帰りにすると保険の支払が減る可能性などが指摘され、そのあたりがあやふやなまま、導入は見送る事になりました。入院したくない患者さんも多く、安定している患者さんにはオプションとしてあってもよいと思うので、今回のエキスパートオピニオンを読んでまた、この導入の可能性を考慮しているところです。

エキスパートオピニオンでは日帰りPCIをしても大丈夫であろう患者さんの条件があげられていますが、実際には当てはまるのは20-30%の印象です。NYで日帰りPCIを行っている病院によると、実際に条件に合う患者さんは20%ほどのようです。安全性のデータが出そろってきているので、コストも考慮するとアメリカでは今後一般的になっていくのではないかと思います。日本ではどうなのでしょうか。

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2 Responses to 日帰り心カテ治療

  1. Katsu Kubota says:

    Dr.Yumi,

    こんにちは。日帰りの心カテ治療について、興味深くよませていただきました。
    日帰りの心カテ治療の割合に関する論文等は、あるでしょうか?

    Katsu Kubota MD, Ph.D.
    Chief Medical Director
    RGA Reinsurance Company Japan Branch
    Midtown Tower 41F
    9-7-1 Akasaka Minato-ku
    Tokyo 107-6241 Japan
    T. 03-3479-7191 F. 03-3479-7196

    • Dr.Yumi says:

      非常に遅れてのお返事申し訳ありません。日帰りの心カテ治療の割合に関する論文は見た事がありません。最近では、多くの施設が始めているようです。

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